【恋愛心理学者と語る】メラビアンの法則はうそ?「見た目が9割」の誤解が、あなたの恋愛を壊している

コミュニケーション術や恋愛テクニックとして、あまりにも有名なメラビアンの法則。あなたも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

ネットで「メラビアンの法則」と検索すると、以下のような文言を目にするでしょう。

「人は見た目が9割」
「話の内容より、見た目や声のトーンが大事」

確かに、このようなうたい文句は恋愛テクニック本や、かつて大ヒットになった『人は見た目が9割』(竹内 一郎、新潮社)などで話題にもなりました。

しかし、もしこれが間違いや勘違いだったら!?

「えっ、そんなことあるの??」と思ったかもしれません。しかし、ナレソメ予備校の恋愛心理学者・山崎は「とても大事な前提が抜けていて、誤解されている」と警鐘を鳴らします。

世に広く流布する誤った情報が、かえって男女間のコミュニケーションに溝を生み、恋愛や婚活がうまくいかない原因にさえなっているとしたら……。

今回は、ナレソメノート・副編集長のタナカが、山崎と共にメラビアンの法則が成立しうる条件と、恋愛・婚活に本当に役立つコミュニケーション術について、徹底的に深掘りします。

「見た目が9割」は大間違い! メラビアンの法則を正しく理解する

タナカ: 「メラビアンの法則」ですが、一般的には「第一印象は見た目が55%、声が38%、話の内容はたった7%で決まる」みたいに言われていますよね。でも、あれって実は違うんですか?

山崎: それは最も広まっている誤解です。とても重要な前提が抜けていて、本来のメラビアンの法則とはかけ離れてしまっているのです。

タナカ: そうなんですか!? では、本当はどういう法則なんですか?

山崎: 「話の内容と表情に『矛盾』が起きたとき」、人はどの情報を優先して信じるかという研究なんです。

例えば、口では「楽しいよ」と言っているのに、表情は真顔で声も低い。そんなとき、相手は言葉よりも「楽しくなさそう」な表情の方を信じますよ、というのがメラビアンの法則の結論です。

タナカ: なるほど! 第一印象全般の話ではなく、あくまで感情を伝える場面で、言葉と表情が食い違ったときの話なんですね。

山崎: そのとおりです。その矛盾した状況で、人は表情などの「視覚情報」を55%も優先してしまう。この数字と「見た目」という言葉だけが一人歩きしてしまったんですね。

これは「7-38-55の法則」というキャッチーな別名があるくらいですから、前提が抜け落ちて広まりやすかったんだと思います。

なぜか彼に本心が伝わらない……。その原因は、あなたの「表情」にあった

タナカ: ということは、この法則を正しく理解すれば、恋愛や婚活でのコミュニケーション改善にすごく役立ちそうですね。例えば、初対面のお見合いやデートで、男性が気をつけるべきことはありますか?

山崎: まさに初対面のシーンで、この法則は威力を発揮します。特に男性は、ポジティブな感情を伝えるときの表情が重要ですね。

よくあるのが、「今日はお会いできるのを楽しみにしていました」と言葉では伝えているのに、緊張のあまり表情がすごく硬くて、キリッと決まりすぎちゃっているケースです。

タナカ: あぁ、あるあるですね! 良かれと思って真剣な顔をしているんでしょうけど……。

山崎: そうなんです。でも、受け取る女性側からすると、言葉と表情の矛盾が生まれているわけです。そうなると、メラビアンの法則に従って、言葉より表情が優先される。結果、「なんかすごいガンギマリの人が来たぞ……」と引かれてしまうんです。

タナカ: なるほど……。せっかくの第一声が、違和感として受け取られてしまうんですね。

山崎: はい。特に女性は、その「あれ?」という違和感に非常に敏感です。実際に、結婚相談所の現場では「理由は分からないけど、なんかちょっと違和感があったんです」という理由で交際終了になるケースは頻繁にあります。

いかに口がうまくても、表情との矛盾が生じた瞬間に、本心を見抜かれてしまう。だからこそ、お見合いや初デートの一言目を発するときの表情が、その後の展開を大きく左右するんです。

タナカ: では、女性が初対面で気をつけるべきことはありますか?

山崎: 基本は男性と同じですが、女性の場合は、緊張から相手の目を見られずに、顔が下を向いてしまうパターンに注意が必要です。「今日はお時間ありがとうございます」と感謝を伝えても、表情そのものが見えていなければ、あなたのポジティブな気持ちは正しく伝わりません。

言葉だけが空回りして、「本当に楽しみにしてくれていたのかな?」と男性を不安にさせてしまう可能性があります。

「いつ結婚してくれるの?」。その笑顔が、プロポーズを遠ざける

タナカ: 男女共に、初対面ではポジティブな表情が大事だということですね。では、関係性が深まってきたカップルではどうでしょうか。女性が「真剣な話をするときの表情」に注意が必要、というお話がありましたが、詳しく教えてください。

山崎: これは本当に多くの方に知ってほしいのですが……。場の空気を悪くしたくない、相手に重いと思われたくないという気持ちから、すごく大事な話を、ニコニコしながら、あるいはヘラヘラした雰囲気で伝えてしまう方が本当に多いんです。

タナカ: うわー、それは目に浮かびますね……! 良かれと思って笑顔で伝えているのに、逆効果になっているパターンですね。

山崎: まさにそれです。例えば、結婚について本気で考えてほしい、という話を笑顔で切り出したとします。すると男性側は、「言葉は真剣そうだけど、表情は笑っている。これは大した話じゃないな」「いつもの軽いジョークだろう」と判断してしまう。

タナカ: それで「彼は真面目に考えてくれない!」ってなっちゃうんですね……。

山崎: はい。女性側は勇気を出して伝えたつもりでも、その本気度は全く伝わっていない。このすれ違いが、「うちの彼は話を聞いてくれない」という悩みの正体だったりするんです。

タナカ: ということは、世のカップルたちの間で繰り返されているであろう、「ねぇ、私たち、いつ結婚するんだろうね?」と笑顔で彼に問いかけるやりとり……。あれは全く意味がない、と。

山崎: 残念ながら、その伝え方をしている限り、関係は進展しないでしょう。

その笑顔が「私はこの話題を深刻に捉えていませんよ」というメッセージとして、相手に伝わってしまっていますから。結婚って、人生におけるすごく大きな決断ですもんね。笑顔で言われても、男性からしたら「覚悟」が感じられないのかもしれない。

タナカ: 結婚の話もそうですが、もっと手前の「告白」のときはどうなんでしょうか? これは笑顔の方がいいんですか?

山崎: いえ、このときもキリッとすべきなんです。

照れ隠しの冗談はNG! 告白は「真顔」で覚悟を伝えろ

山崎: 考えてみてください。告白のときに口から出る言葉って、「好きです」「付き合ってください」といった、自分の誠意や覚悟を示すものですよね。その言葉の重みに見合った表情、つまり、誠実さが伝わる真剣な表情である必要があるんです。

タナカ: 確かに……。ヘラヘラしながら告白されても、本気だとは思えないです。

山崎: にもかかわらず、照れ隠しでやってしまう人が後を絶ちません。例えば、男性が「俺たち、そろそろ付き合っちゃう?」と冗談っぽく言ったり、女性が「私たち、もう付き合ってるんでしょ〜?」と甘えた感じで言ったり。

タナカ: あぁ、やりがちですね……。

山崎: でも、それはメラビアンの法則で言えば、男性は「ふざけている」、女性は「甘えている」という表情や雰囲気が優先して伝わってしまいます。

結果、相手も真剣に受け止めることができず、関係が曖昧なままになったり、はぐらかされたりする。本当にその人と真剣な関係を始めたいなら、告白前に一回、自分で自分のほっぺたをパチンとたたくくらいの気持ちで、真面目な顔を作ってから伝えるべきなんです。

今すぐできる! コミュニケーション力を上げるための簡単トレーニング

タナカ: なるほど……。状況に応じて、伝える言葉と表情を意図的に一致させることが重要なんですね。自分の気持ちを正しく伝えるために、何か今日からできるトレーニングのようなものはありますか?

山崎: あります。とてもシンプルですが、鏡やスマートフォンのカメラで、自分が話しているときの表情を確認する習慣をつけてみてください。

タナカ: 確かに、自分の表情って意外と見ていないですね!

山崎: そうなんです。自分が「楽しい」と感じているとき、本当に楽しそうな顔をしていますか? 真剣な話をしようとするとき、意図せず笑っていませんか?

Zoom会議などで自分の顔が映るときもチャンスです。客観的に自分を見る「メタ認知」を鍛えることで、コミュニケーションは劇的に改善します。

タナカ: 最後に、恋愛や婚活のコミュニケーションに悩む読者の皆さんへ、山崎さんからメッセージをお願いします。

山崎: まず、忘れないでほしいのは、メラビアンの法則で最も危険な誤解は、「言葉は7%しか伝わらないから不要だ」という考え方だということです。これは断じて違います。

「言わなくても伝わる」なんてことはありません。自分の気持ちを「言語化」して伝える努力は、コミュニケーションの基本であり、絶対に不可欠です。

その大前提の上で、今日お話ししたように、伝えたい感情と「表情」を一致させることを強く意識してください。

うれしいときは、心からの笑顔で「うれしい!」と伝える。
真剣な話をするときは、真摯な表情で相手の目を見て話す。
告白するときは、覚悟を決めた顔で誠意を伝える。

指標としては、「今、伝えたいこの物事は、自分にとってどんな感情なのか?」と自問し、その感情に合わせた表情や雰囲気作りをすることを心がけてみてください。

この2つが揃って初めて、あなたの本当の気持ちは相手に届きます。小手先のテクニックではなく、このコミュニケーションの本質に立ち返ることが、幸せな関係を築くための最も確実な一歩になるはずです。