クロちゃんとリチが別れた理由を解説。プロポーズ破局事件の全てを、婚活のプロが語ります。

2025年1月22日に放送されたTBS系バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』で、安田大サーカスのクロちゃん(48歳)が2年間交際していた恋人・リチ(28歳)にプロポーズした。しかし、リチは「ありがとう。でも結婚できないです」と断り、2人は破局。リチは、クロちゃんが自分を下に見ていると感じていたことや、理想の彼女を演じていたことが限界に達したと語っている。
参考:日刊スポーツ「クロちゃん「水ダウ」でプロポーズ失敗、恋人リチ「結婚できない、無理です、限界です」破局

『水曜日のダウンタウン』の名物カップル、クロちゃんとリチ。

同番組内の恋愛オーデション企画「モンスターラブ」がきっかけとなって恋人同士となった2人だ。
発端となった企画は、クロちゃんのことが好きな2人と、アイドルデビューを目指す7名が、クロちゃんに好かれるために互いにだまし合いながら合宿生活を送るというもの。
その中で、当初クロちゃんが好きで応募したリチは最終審査に残ってアイドルとしてデビュー。しかし、アイドルと恋愛をしないポリシーを持つクロちゃんから告白を受け、最終的にグループ「都内某所」を脱退し、クロちゃんと付き合うという道を選んだ。

当初は「こんなにかわいい女の子がクロちゃんを本気で好きなわけがない」とヤラセを疑う声もあったが、事実2人は仲むつまじく交際し、たびたびツーショットをあげるなど、着実にファンを作っていった。私自身、2人のアンバランスな関係性が好きで、「良いカップルだなあ」と見守っていたファンのうちの1人だ。

今まで数々の心ないドッキリに騙され続けてきたクロちゃんが、ようやく「本当の愛」を見つけた。

きっと多くの人が、ちゃかしながらも応援していたように思う。

そんな2人が「別れた」のが、昨夜。

それも番組内で「サプライズプロポーズ企画」としてクロちゃんが高額な指輪まで用意して向き合った結果が「お別れ」だったので、視聴者は騒然となった。

しかし最もパニックに陥っていたのは、誰より当事者のクロちゃんである。

まっすぐ、切れ味よく、だけど丁寧に言葉を選びながら別れを選んだ理由を口にするリチを前に、当のクロちゃんは高額な指輪を手に混乱するばかり。

「なんで言ってくれないの? 言ってくれたら変わったのに」

美しく凛と前を向くリチと、鼻水を流してのたうち回るクロちゃん。

私はこの2人を見て、「ああ、男女だな」と思った。

この構図を、私は何度も見たことがある。

既にずいぶん前から決意して別れを告げた女性と、「そんな前触れはなかったのに」と、青天のへきれきのごとく嘆く男性。

どうしてあれだけクロちゃんが好きだったリチが、別れを選択したのか。

どうしてクロちゃんは、リチの気持ちに気づけなかったのか。

どうしてリチは、こうなる前にクロちゃんと向き合わなかったのか。

今回は、私なりに「2人が別れた理由」を解説する。

ちなみに、この物語は、決して「珍しいもの」ではない。
むしろ、これを読んでいる男女の多くが、同じようなことを経験したことがあると思う。

特にクロちゃんに共感した男性は要注意。
あなたもクロちゃんと同じように、再びフラれる日は近いかもしれない。

言わない女」自爆女性は、関係を破綻させる。

 ※画像はイメージです

さて、今回のケースで最も目立ったのは、リチの「言わなさ」だろう。

実際、潤んだ目で「クロちゃんに『理想の恋人像』を押し付けられるのが嫌だった」と言う彼女に、クロちゃんは「なんで言わないの」とすがっていた。

ナレソメ予備校には、「自爆女子」という言葉がある。
相手に対して意見や不満を口に出すことができずに、散々溜め込んだあげく、自爆する女性のことだ。

小さな不満をその場で言えばよいものの、言わない。チリも積もって山になった結果、どこかのタイミングで突然せきを切ったようにキレ始めるのが、「自爆女子」の特徴である。

「自爆」のきっかけはたいてい小さなことで、例えば「いつも靴下を裏返さずに洗濯カゴに入れる」とか「トイレットペーパーの芯を放っておく」とか。そういったトリガーを発端に、今まで文句一つ言わなかった彼女が「私はずっと我慢してきた」と泣き始める。こういった状況を経験したことがある男性は、多いのではないだろうか。

彼女たちは一度爆発してしまうと、手に負えない。
数ヶ月前に言った一言や、数年前にしたけんかの結末、もっと言えば出会った頃の話にまで遡り、「その記憶力、他に生かせないんかい?」ってくらいに細かく、「本当はあれも嫌だった」の発表会が始まる。

男性からしてみれば、今までは「何も言われていない」認識なので、当然「何も言わないということは、文句がない」と思っていたわけである。そんな中で突如として大量の不満をぶつけられてもそもそも記憶がないし、「なんでそのときに言わなかったの?」と途方に暮れるのは、当然のことだ。

靴下の裏返し、トイレットペーパー、ちょっと残った炊飯器のご飯、けんかの後始末。

確かに、どれもこれも一つ一つをその場で解決できれば、大きな問題にはならなかったはずだ。

しかし、「言えない」で積み重なった小さな「不満」は、いつしかその人の「人間性の否定」にまで繋がる。不満は新鮮なうちに解消しないと、どんどん重くなり、粘度を増し、心にこびりついて取れなくなる。ついに自爆するときには既に心が固まり、愛も冷え切り、「別れる」の一点張り、なことさえあるのだから恐ろしい。

そうなってから、「どうしてそうなる前に言ってくれないの?」と言っても、時既に遅し。冷え切った女性の心は、もう二度と温度を取り戻せないから、さらにたちが悪い。

これに関しては、私も散々女性側に「言わない」ことの弊害を伝えてきた。

男性がいかに鈍感で、口に出さなければ伝わらないのかを伝え、「嫌なことは嫌だと言っていいんだよ」と、ごく当たり前のことを告げるたび、多くの女性は涙を流し、「知らなかった」という顔をする。その表情は、「言いたいことを言ってもいいの? 目からうろこだった」とでも言うようだ。

このように、「言えない女性」というのは、男性が思うよりも多い。

好きだからこそ、言えない。

嫌われるのが怖くて、言えない。

言葉がまとまらなくて、言えない。

「言えない」の理由はさまざまだが、それが2人の関係を腐らせるのは確か。

クロちゃんとリチに、一体どんなやりとりがあったのかは分からない。
だけど、彼女の「言えない」が2人の関係に大きな影を落としたという事実は、まず一つありそうだ。

しかし……である。

一方で、彼女の「言えない」が、本当に彼女だけのせいだったのか? というのは考えたい。

本当に彼女は自分の気持ちを初めから言ってこなかったのだろうか?

生粋の自爆女子だった?

実を言うと私は、必ずしもそうではないと思っている。
というのも「自爆女子」と同じくらいに、「自爆女子製造機」と言っても過言ではない男性が存在しているからである。
今回のケースでは、リチがひとりでに自爆したのではなく、むしろクロちゃんが「自爆」させたのではないか?というのが、私の考察だ。

どうしてクロちゃんは、リチを自爆させてしまったのか。

実は私は、この番組で出会った時点で、未来は決まっていたように思うのだ。

「言わせない男」自爆女子製造機になってない?

 ※画像はイメージです

リチの台詞で、「クロちゃんが私の本音を奪った」というものがある。

私はこの台詞を見たとき、ちょっと泣きそうになった。この言葉が2人の関係性の全てを物語っているように感じて、それが過去の自分と重なったのだ。

私は「言えない女」について、「自爆女子」というキャッチーな名前を付けて改心を求めるコンテンツを散々扱ってきた。
加えて、今回のクロちゃんとリチの一件についても、SNSを見るとリチの「言えなさ」に言及する人が多かったように思う。

確かに女性は男性に比べて、要求をただストレートに伝える術を持っていない人が多いのは事実だ。

それは多くの女性同士が、「察するコミュニケーション」を主軸に会話を積み上げるのを日常的にやってのけるからだと思う。
不平不満を伝えるのは、相手そのものを否定することだと思っているから、それが「恋人関係」や「夫婦関係」であればなおさら、「大切な人であればあるほど言えない」という状況に陥ってしまう。
もちろんそれは、明確に間違えている。大切な存在、維持したい関係であればあるほど、言いにくいことこそ伝える技術を身につけなければ、その関係が破綻するのは常識だとも言える。

しかし「言えない」人がいる一方で、「言わせない」人がいるのも忘れてはならないと思うのだ。
そして私は今回、クロちゃんがまさにリチにとって、「言わせない人」だったのだろうと感じている。

そもそもクロちゃんとリチの関係には、明確な上下関係があった。「リチはクロちゃんの大ファンであり、クロちゃんに『選ばれて』恋人になった」という構図が、初めから前提になってしまっていた。

人と付き合ううえでいちばん大切なのは、相手を「見下す」とか「見上げる」みたいに、自分の中で勝手な上下関係を構築しないことだというのは、私のかねてからの持論だ。上下関係を意識していると絶対に態度に漏れ出るから、「上に見られてるな」「下に見られてるな」と、相手は気づく。

そしてこれに気づくと、たちまち2人の関係は破綻する。

クロちゃんは、「リチが俺を好きだから、調子に乗っていた」と泣いた。
リチは、「私たちはいつも対等じゃなかった」と泣いた。

クロちゃんは自分のことが大好きなはずだと、ある種「見下げている」リチに、自分が彼女のことをもっと好きになって「あげられる」よう、「ギャルになってくれ」とか「太らないでくれ」とか、そういう要望をオブラートに包まずに指示として投げつけた。
これは一見失礼なように見えて、私はクロちゃんなりの「愛」だったんじゃないかと思う。「俺のことが好きなんでしょ? じゃあ、こうしたらもっと俺は君のことを好きになるよ」という道標を示してあげていたわけだ。

一方でリチはリチでいつまでもクロちゃんを「見上げている」から、指示に背けない。ふだんであれば「おかしいだろう」と指摘できる部分であっても、自分を遥か見下げて指示を下す人間には、言えなくなるものだ。さらに、見上げている人からのアドバイスは、基本的に「強い指令」のように感じる。結果、リチは理不尽な司令も飲み込み、クロちゃんにとっての理想的な彼女を演じるようになった。

私はこの関係性が成り立ってしまっている時点で、リチが「言えない」ことについては一定の理解をせざるを得ないと思っているのだ。

それに加えて、私はリチが最初から最後まで、本当に「言えなかった」のかというと、そうではないとも思う。どこかのタイミングで、「言わなくなった」のでは? と予想しているのだ。

実は女性だって、「言えない」ことの弊害はわかっている。だから多くの人は言葉を選び、タイミングを選び、関係が始まった初期は意見や不満を伝えようとしているケースが多い。

「これは嫌だ」「こうしてほしい」「私はこう思う」
ふだん慣れない「伝える」という作業に神経を擦り減らしている彼女たち。

そんな必死の訴えに、男性側はどう反応しただろうか。ここでもまた、上下関係の弊害が出てきてしまう。
女性側を極端に見下げている場合、男性は意見を言われたところで重要事項としては取り上げないのだ。

「俺のほうが正しいのに」
「またつまらないことでヒステリックになって」

口には出さなくても、そんな思いから小さな反発を跳ね除ける。上の空になって取り合わなかったり、頭ごなしに否定したり、はたまた、とりあえずは「そうだね」と言いつつ、全く改善しなかったりする。この辺りは心当たりのある男性も、多いのではないだろうか。

女性は必死になって伝えているのに、男性には「伝える」ことの労力が想像できないから、それを恐ろしいほどに軽く扱う。

そうやって、「言っても伝わらない」「言っても跳ね除けられるという」気持ちが積み重なっていくうちに、女性は疲弊し、徐々に伝えることを諦めてしまうのだ。

おそらくリチの「クロちゃんが私の本音を奪った」という言葉は、こういう状況から来ている。

クロちゃんは「リチは本音を言わない」と言ったが、違う。
リチに言わせれば言葉どおり、「クロちゃんが私の本音を奪った」のだ。

そしてこういったケースは、男女の間に普遍的に起こる。
一生懸命言葉を尽くしても取り合ってもらえないと感じた女性はいつしか伝えることを諦め、黙り、そして「言わなく」なる。

しかし、「言わなかった」思いは、隠すことはできても、解決なしに無かったことにはできない。時間をかけて腐敗したその思いはいつか取り返しがつかなくなって、冷たく爆発する。急速に心の温度を失い、自爆した女性の心は、もう戻ってこない。

一方で男性は、「言わなくなった」女性に対して、「最近、文句を言わなくなったな」と心地よささえ感じ、2人の関係が改善したかのような錯覚さえ起こす。刻々と近づく「限界」に気づかない。

こうして、「言わない女」と「言わせない男」の赤い糸は、途切れてしまうのだ。

クロちゃんの、「どうして言ってくれなかったの?」という言葉に、ただクロちゃんの瞳を見つめ返すリチ。あの瞳には、「伝えていたじゃない」という思いが宿っているように見えた。

どうすれば「男女」は分かり合えるのか

いろいろと好き勝手に語ったが、実際のところ私はただの一視聴者であり、彼らの本当のところは分からない。本当はクロちゃんが生粋のモラハラだったのかもしれないし、リチがただただわがままな女性だったのかもしれない。

リアリティショーは視聴者向けに編集されたドラマだ。
私たちはそれに、踊らされているにすぎない。

しかし一方で、彼女たちのような状況に置かれた経験のある男女は、この世界に無数に存在すると思う。

女性にとっては、「伝えていたのに、最後まで伝わらなかった恋」。
男性にとっては、「伝えてほしかったのに、突然終わってしまった恋」。

こういった悲しい男女の擦れ違いを起こさないために、私たちは一体何を心がければよいのか。

僭越ながら、恋愛作家として散々人様の恋愛に向き合ってきた私が助言するとするなら、まずは何よりも「2人の関係をフラットにすること」だと思う。

立場が対等ではなく、相手が好きだからと意見を押さえ込むような関係は、どうがんばってもおよそ2-3年で破綻する。

リチはどこかで殻を破り、嫌われる覚悟を持ってクロちゃんに思いっきり不満を言うべきだったし、クロちゃんはリチに、「大丈夫?」と声を掛け、積極的に「言える場」を作るべきだった。

始まった時点ではっきりとした上下関係があり、健全な交際が難しかった2人。
誰よりもお互いがその理不尽さを理解し、向き合うことが必要だったのではないか。

これは彼女たち以外にも言えることで、例えば「上司と後輩の職場恋愛」とか、「どちらかが相手に憧れて付き合った」ケースとか、始まりの時点で立場に違いが出てしまうとは、特に「上」に立ってしまう側が意識して、関係性をフラットにしてあげることが必要だ。

心を打ち明け合うには、体力と準備がいる。どれだけ事前に対等な立場を作り、そしてどれだけ、心の内を明かせるか。実はそれが、男女の擦れ違いをなくすうえで、いちばん大切なことなのかもしれない。

まとめ

最後に、皆さんにはぜひ、付き合ってからの2人の映像を見てみてほしい。

クロちゃんがデリカシーのない言葉を投げかけるたび、最初は「好きで飲み込む」選択を取っていたであろうリチが、しだいに表情を曇らせ、「受け流す」ようになっている様子が見て取れると思う。

あれはまさに、「諦め」の表情だと、私は思う。

関係性が終わる頃、彼女は何も言わなくなっていた。
だけど私は彼女が「何も言わない」ことで、ギリギリまで気持ちを示していたと思う。

「リチは意見をぶつけるべきだった」という意見も多い。
しかし私はリチが、それを諦めてしまった気持ちがよく分かる。

最後の別れのシーン。
リチは前を向き、しっかり自分の言葉を伝えた。

「クロちゃんが私の本音を奪った」と言った彼女はあのときようやく、本音を取り戻した。

そしてそれを、逃げることなく、クロちゃんに伝えた。

あれは間違いなく、彼女なりの「愛」だと思う。「言わなかった」彼女は、最後の最後でもう一度、彼と向き合ったのだ。

自分のためにこの人と別れようと決め、懸命に別れの言葉を紡ぐ女性は、いつも美しい。
「情」だのなんだと言い訳をしてとっくに干からびた関係性にすがりつく者とは比べものにならぬほどに輝いている。

2人の幸せを祈りながら、無意識に「言えない」や「言わせない」をしてしまっている誰かにとって、彼女たちを通して何かを考えるきっかけになればと、そんなことを思った。

詳しく解説した動画はこちらから

yuzuka