会話のテンポって何? 恋愛における会話のテンポの意識調査

パートナーとの関係で大切なのが、日々のコミュニケーションです。何気ない会話の積み重ねが、関係性を育てていく……。そう感じている人も多いでしょう。これから出会いを求める人にとっても、「会話の心地よさ」は大切な判断軸です。

なかでも気になるのが、「会話のテンポが合うかどうか」。恋愛の条件としてよく挙がるこのポイントですが、実際にはどんな状態を指すのでしょうか。

今回は、全国の既婚者・未婚者を対象に「会話のテンポ」に関する意識調査を実施。その結果から、恋愛や夫婦関係における“心地よいテンポ”の正体が見えてきました。今後のコミュニケーションのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

「会話のテンポが合う」の正体は、まさかの「沈黙」?

本調査では、まず男女708名に「『会話のテンポが合う』とは、どのような状態を指すか?」という自由回答形式のアンケートを取りました。

回答に最も多く出現したキーワードは、話の「スピード」や「自然さ」を抑え、なんと「沈黙」が20.8%とトップになりました。多くの人が会話のテンポを考える上で、意外にも「沈黙」を強く意識していることがわかります。

2位以下は「苦」(9.2%)、「自然」(6.2%)、「スピード」(5.9%)と続きます。

それぞれのキーワードに関する具体的な回答例は以下の通りです。

【キーワード『沈黙』の回答例】

  • 沈黙が気にならない
  • 沈黙が不自然に感じない
  • 沈黙でも楽しさや安心感を感じる

【キーワード『苦』の回答例】

  • 沈黙が苦でない
  • しゃべることが苦にならない
  • 違和感や苦痛を感じずに会話ができる

【キーワード『自然』の回答例】

  • 不自然な間がない
  • お互いが自然に1:1の割合で話せていること
  • 話してると自然とお互い笑顔になる。無理に合わせようとか思わず、ナチュラルに話せる

【キーワード『スピード』の回答例】

  • 話のスピード感が合う
  • 考えるスピードが似てる
  • しゃべるスピード

「沈黙」の捉え方は4種類。一見似ているようで違う本音

「会話のテンポ」を考える上で「沈黙」が重要なのはわかりましたが、では、「沈黙」の何を基準に「テンポが合う」と判断しているのでしょうか。

この点を深掘りすると、一見似ているようで全く異なる4つの捉え方があることがわかりました。「沈黙を気にしない」「そもそも沈黙しない」「沈黙しても安心できる」「沈黙のタイミングが合う」。この違いにこそ、関係性の本質が隠れているのかもしれません。

151人への調査の結果、最も多かった回答は「沈黙が気にならない」で、実に78.1%を占めました。多くの人が、沈黙があってもそれを気まずいと感じないことを重視しているようです。

続いて「沈黙しない(=会話が続く)」が9.3%、「沈黙しても安心(=居心地がいい)」が7.3%、「沈黙のタイミング・頻度が合う」が5.3%という結果でした。

既婚者と未婚者で異なる「沈黙」への価値観

この「沈黙」の捉え方は、既婚者と未婚者で違いが見られました。両者とも「沈黙が気にならない」がトップである点は共通していますが、その割合は既婚者が83.9%に対し、未婚者は74.7%でした。

注目すべきは、「沈黙しない」ことを重視する割合が、未婚者(11.6%)は既婚者(5.4%)の2倍以上になっている点です。また、「沈黙しても安心」という項目も、未婚者(9.5%)が既婚者(3.6%)を上回っています。

そんな未婚者と既婚者のスタンスの違いは、実態のアンケートからもうかがえます。

【「沈黙しない」と回答した人の声】

  • 既婚者:
  • 沈黙にならない。自然に話せる
  • 気まずい沈黙が流れない。やり取りにズレが生じてもすぐに修正できる
  • 未婚者:
  • 沈黙にならない。聞きたいことも話したいこともスラスラ出てくる
  • 会話のキャッチボールがスムーズ。積極的に相手にツッコみたくなる。沈黙にならない

未婚者の回答からは、「スラスラ」「スムーズ」といった言葉が示すように、途切れない会話のリズムや盛り上がりを重視する傾向が見えます。

男女でも違う? 心地よい「沈黙」の定義

次に、男女別で沈黙の捉え方を見ていきましょう。こちらも男女ともに「沈黙が気にならない」が約8割と大半を占める結果は同じでした。

しかし、2番目に多かった回答に違いが現れます。男性は「沈黙しても安心」(9.1%)であったのに対し、女性は「沈黙しない」(10.2%)が2番目に多くなりました。

【男性で2番目に多かった『沈黙しても安心』の回答例】

  • 会話中の沈黙も楽しめる
  • 沈黙しても、落ち着いていられる関係
  • 沈黙が起ころうともお互いにリラックスできて、焦ることがない関係性

男性の回答からは、言葉がなくても落ち着いていられる「居心地のよさ」を重視する傾向があるようです。

【女性で2番目に多かった『沈黙しない』の回答例】

  • 会話の途中で沈黙が生まれない
  • 沈黙にならない。会話の中でテンションが似ている
  • 沈黙にならないし、なっても苦痛でない

一方で、女性の回答からは、沈黙が生まれないような会話の盛り上がりや「テンションが似ていること」を求める意識が見受けられます。

【所長・山崎の考察】関係満足度に直結する「女性の自己開示」

本調査では、「会話のテンポが合う」ことを「沈黙」という基準で判断する人が多いことが明らかになりました。

具体的には、沈黙を意識せずにいられることや、沈黙時にネガティブ感情を抱かないこと、すなわち「沈黙が気にならない」ことを判断基準としている人が非常に多い結果となっています。

一方で、「沈黙しない」の回答率は、未婚者が既婚者の2倍以上、女性が男性の1.5倍以上でした。恋愛・婚活における判断基準としての「沈黙」は、夫婦のコミュニケーションを切り口に捉えることができるでしょう。

夫婦のコミュニケーションと満足度の関連を調査した伊藤・相良・池田(2007)は、妻は夫よりも配偶者への自己開示が多く、自己開示が満足度を高める程度が強いと報告しています。また、妻の自己開示が夫の満足度を高める傾向も見られます。

以上より、満足度の高い夫婦のコミュニケーションにおいては、妻の自己開示に夫が耳を傾ける時間は、夫の自己開示を妻が聞く時間よりも多いと考えられます。夫婦の会話における聞く・話すのアンバランスさが、結果として夫婦双方の満足度を高めていると言えるでしょう。

逆に言えば、平等な自己開示を求めすぎることが、夫婦のコミュニケーションをゆがませ、沈黙しやすくなったり、沈黙にネガティブ感情を抱いたりする結果につながる可能性も考えられます。

引用:伊藤裕子・相良順子・池田政子(2007)夫婦のコミュニケーションが関係満足度に及ぼす影響―自己開示を中心に― 文京学院大学人間学部研究紀要

<出典記入方法>
「恋愛経験に関する調査(ナレソメ総研調べ)」及び、本記事URLを必ず明記してください。

<調査方法>
インターネットによるアンケート調査

<調査期間>
2024年9月27日(金)〜2024年11月3日(日)

<調査対象>
全国の18歳以上の男女

<回収サンプル数>
708名(女性589名、男性119名)