【ロジカルラブ・イデオロギー】現代の結婚に必要な価値観は、「ドキドキ」だけで選ばないことである。

「好きになってから相手を知る」のではなく、「相手を知ってから好きになる」。
これこそが、感情に流されない合理的な愛――ロジカルラブ・イデオロギーだ。
「恋愛をして、結婚して、子どもを産む」。
この流れが当たり前とされているが、実はそれはここ数十年で生まれた価値観にすぎない。
かつて日本の結婚はお見合いが主流だった。
しかし、高度経済成長期を境に「恋愛結婚こそ理想」という考えが浸透し、恋愛感情が結婚の前提となった。
だが、その結果どうなったか?
離婚率の上昇、結婚後のギャップに苦しむ人の増加――「好きだから結婚する」は本当に正しいのか?
本記事では、恋愛史上主義(ロマンティックラブ・イデオロギー)が抱える問題を明らかにし、長期的な結婚を実現するための新しい価値観「ロジカルラブ・イデオロギー」について解説する。
ロマンティックラブ・イデオロギーとは?
ロジカルラブ・イデオロギーの話をする前に、まずはロマンティックラブ・イデオロギーの話に触れておきたい。
「結婚をするなら、キュンが必要!」――そう思う人は多いかもしれない。
でも実は、それが“当たり前”になったのは、歴史的に見ればごく最近のことにすぎない。
ロマンティックラブ・イデオロギーとは、「恋愛・結婚・出産はセットであるべき」という価値観のこと。
この考えが生まれたのは18〜19世紀のヨーロッパだ。産業革命によって社会が近代化する中、国家は安定した家族制度を必要とした。
そのため、恋愛によって結ばれた夫婦が結婚し、子どもを産み育てることが「理想の形」とされ、この価値観が広まっていった。
しかし、この考え方が日本に本格的に定着したのは、1950年代後半の高度経済成長期から。それまではお見合い結婚が主流で、結婚は個人の恋愛感情よりも、家同士のつながりとして考えられていた。
職場恋愛や自由恋愛の広がりとともに、恋愛結婚が一般的になり、今では「結婚するなら恋愛して当然」と考える人が多い。
でも、その“当然”は、ほんの数十年の歴史しかない新しい価値観にすぎないのだ。

国立社会保障・人口問題研究所(2023)によると、恋愛結婚が見合い結婚を始めて上回ったのは1960年代後半です。更に、2010年代からは見合い結婚率が再び上昇傾向にあります。恋愛結婚が主流と言われる時代は決して長くないかもしれません。(ナレソメ総研所長 山崎)
ロマンティックラブ・イデオロギーの問題点
ロマンティックラブ・イデオロギーは「恋愛を結婚の前提とする」という価値観を根付かせた。
しかし、一見幸せを生むようなこの「前提」は、現代において多くの矛盾と問題を生じさせている。
「好き」が中心の相手探しが主流になることによって起こる離婚率の増加。
お見合い結婚が当たり前だった日本も、今ではすっかり「ロマンティックラブ・イデオロギー」が浸透し、「結婚するなら恋愛して当然」と考えられるようになった。
だが、その普及とほぼ同時に、離婚率も右肩上がりに増加していることをご存じだろうか?
なぜか?
恋愛結婚は「好き」という感情を基盤にしている。付き合い始めは相手にときめき、理想を抱き、良い面ばかりが見える。しかし、結婚生活とは日常の連続だ。恋愛のドキドキはしだいに薄れ、「こんなはずじゃなかった」「思っていた相手と違う」と感じることが増え、最終的に「もう無理」となるケースも少なくない。
一方、お見合い結婚が主流だった時代は、そもそも恋愛感情を結婚の前提にしていなかった。結婚の目的は家庭の安定や社会的な役割の形成にあり、多少の不満があっても「どうすれば関係を維持できるか」を考えることが当たり前だった。
もちろん、当時は離婚しにくい社会構造だったこともあるが、「恋愛感情が冷めた=結婚の終わり」と考える発想自体がほとんどなかった。
しかし、現代の結婚は「ずっと好きでいなければいけない」「ときめきがなくなったら関係が終わる」といったプレッシャーを生みやすい。
その結果、結婚生活に現実的な課題が生じたとき、感情だけでは支えきれず、離婚に至るケースが増えている。つまり、恋愛結婚の普及がそのまま離婚率の上昇につながったのは、偶然ではなく必然とも言える。
恋愛感情が結婚の唯一の前提になってしまうと、結婚を続けるための別の軸――パートナーシップの継続力や生活の安定――が軽視され、結果として破綻しやすくなっているのではないだろうか。
恋愛史上主義になることで増える「結婚できない人たち」
恋愛が結婚の前提となったことで、「恋愛経験の有無」がそのまま「結婚できる・できない」の基準になってしまった。
その結果、恋愛に自信がない人や恋愛経験が少ない人は、恋愛市場で不利になり、そもそも選択肢にすら入れないという状況が生まれている。
本来、結婚とは人生をともに歩むパートナーシップのはずなのに、「恋愛の延長線上にしか結婚はない」という価値観が広まったことで、結婚のハードルは必要以上に高くなり、取り残される人が増えているのだ。

恋愛が結婚の前提条件であるという価値観が広がる一方、交際・キス経験がなくても、男性の3割程度及び女性の約半数が結婚している(小林・大﨑,2016)と報告されています。
ナレソメ総研(2024)でも、交際3人目との結婚が中央値であり、交際1人目と結婚した男女が10%以上となっています。恋愛の延長線上の結婚という価値観は、必ずしも実際の結婚において見られるわけではないと言えるでしょう。(ナレソメ総研所長 山崎)
恋愛目的で結婚することによって起こる、「ギャップ」
「結婚したらずっとドキドキできる」――そんな期待を抱いていないだろうか?
恋愛の目的は「ドキドキすること」、結婚の目的は「安定した生活を築くこと」。
本来、全く異なる目的を持つものを同一視してしまった結果、「ドキドキしない相手とは結婚してはいけない」「結婚してもずっとドキドキし続けるべき」という不合理な期待が生まれてしまった。
しかし、結婚生活は恋愛のような刺激の連続ではなく、日常の積み重ねだ。そのギャップに気づいたとき、「こんなはずじゃなかった」「思っていた結婚と違う」と感じる人は多い。
恋愛と結婚を無理に結びつけたことで、理想と現実のずれに苦しむ人が増えているのは、ある意味、必然とも言えるのだ。
ロマンティックラブ・イデオロギーの浸透によって、「結婚するなら恋愛して当然」という価値観が当たり前になった。
しかし、その結果、離婚率は上昇し、恋愛経験の有無が結婚の可否を左右するという新たな障壁も生まれた。
そもそも、恋愛の目的である「ドキドキ」と、本来の結婚で重視すべき「安定感」。
全く異なる目的を持つものを無理に結びつけたことで、「恋愛感情がなくなったら関係は終わりなのではないか?」といった不合理なプレッシャーが生まれた。
その結果として、結婚生活の現実に直面したときに、「こんなはずじゃなかった」と感じ、離婚に至るケースが増えているのではないだろうか。
ロジカルラブ・イデオロギーとは?
それでは、「ロジカルラブ・イデオロギー」とは何か。
実はこれこそが、結婚相談所ナレソメ予備校が推奨する新しいパートナーの選び方である。
「好きだから結婚する」「恋愛感情がなければ結婚は無理」――多くの人がそう思っているかもしれない。
しかし、結婚とは何十年と続くもの。
恋愛のドキドキだけを頼りにして、本当に幸せな結婚生活が送れるのだろうか?
ロジカルラブとは、「結婚生活を中心に考え、QOL(生活の質)を向上させるための合理的なパートナーシップ」のことを指す。
これは「好きになることを諦めろ」という話ではない。むしろ、「相手を知ってから好きになる」ことが大切なのだ。
多くの人は、恋愛において「好きになってから相手を知ろう」とする。
しかし、その順番こそが問題だ。先に好きになってしまうと、肝心な部分に目をつむってしまう。
「恋は盲目」「目の中に入れても痛くない」とはよく言ったものだが、実際は目の中に入れたら普通に痛い。
冷静な判断ができないほどに相手に夢中になることで、都合の悪い部分を見落とし、判断を誤ることがある。
だからこそ、恋愛感情は相手をロジカルに見極め、結婚相手としてふさわしいかどうか判断した後に発動するべきだ。
最初から「好きありき」で突っ走るのではなく、まずは相手を知ること。
そのうえで芽生えた愛情こそが、長く続く関係を築く土台になる。
ロジカルラブは、恋愛のときめきだけではなく、結婚生活を長く幸せに続けるために必要な要素を考える、新しい結婚の価値観だ。

恋人関係を満足させる要因、夫婦関係を満足させる要因、同じ要因であっても影響度が異なることは言うまでもありません。例えば「一目ぼれ」の有無です。
恋人関係であれば、一目ぼれしたパートナーを持つ人は、そうでないパートナーを持つ人よりも関係満足度が有意に高いです。
一方で、夫婦関係では一目ぼれの有無にかかわらず関係満足度に差はありません。
恋愛のときめき以外の要因が、夫婦関係満足度を高めていることが分かります。(ナレソメ総研所長 山崎)
なぜロジカルラブ・イデオロギーが必要なのか?
現代社会では、「恋愛ができなければ結婚できない」という価値観が広まっている。
しかし、結婚に本当に必要なのは、華やかな恋愛スキルではなく、「関係を継続する力」 である。
恋愛は一時的な感情の盛り上がりで成立するが、結婚は長く続く関係性を前提とする。
恋愛力ばかりを重視すると、相手に好かれる技術は磨けても、いざ結婚生活が始まったときに
「一緒に暮らす力」
「困難を乗り越える力」
が不足し、うまくいかないケースが増えてしまう。
そこで、ロジカルラブでは「結婚生活」を軸に考える。
これにより、以下のようなメリットが生まれる。
結婚に対する現実的な準備ができる
恋愛感情だけで相手を選ぶと、結婚後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しやすい。
収入の安定性、価値観の一致、生活習慣の相性など、結婚生活に本当に必要な要素を考えずに進んでしまうと、現実とのギャップに苦しむことになる。
ロジカルラブでは、「結婚後に安定した生活を築ける相手を選び、そのうえで好きになる」 という視点を持つ。
これは「好きになった相手とどうにかして結婚する」のではなく、結婚の現実に適した相手を選ぶことで、関係を長く続けやすくする考え方だ。
その結果、結婚後のギャップを最小限に抑え、現実的な準備ができた状態で結婚生活をスタートできる。
恋愛感情に流されず、しっかりと相手を見極めることで、長期的に安定した結婚生活を築くことが可能になるのが、ロジカルラブの大きなメリットである。
長期的に安定した関係を築ける
「結婚生活を長く続けるために必要なのは、ドキドキではなく安心感である。」
恋愛の初期段階では相手にときめき、非日常的な刺激を求めるが、結婚生活は日々の積み重ね。
恋愛時のような興奮はしだいに落ち着き、それに代わるものとして必要になるのが、信頼や安心感だ。
ロジカルラブでは、「この人となら落ち着ける」「素の自分でいられる」「困難があっても一緒に乗り越えられる」といった持続可能なパートナーシップを重視する。
ときめきを基準にした恋愛結婚では、ドキドキが薄れたときに「関係が冷めた」と感じやすくなるが、安心感を軸にした関係であれば、長期的に安定した結婚生活を築くことができる。
その結果、「恋愛感情の盛り上がりがなくなったら終わり」ではなく、「一緒にいることで安心できる関係」が続くため、結婚後も長く穏やかなパートナーシップを維持できる。
恋愛市場に左右されずに結婚できる
「恋愛市場の競争に勝てなければ結婚できない」――そんなプレッシャーに縛られる必要はない。
現代の結婚は、恋愛を前提とすることで「モテるかどうか」が大きな要素になりがちだ。
しかし、モテる=良いパートナーになれるとはかぎらない。
ロジカルラブでは、恋愛市場での人気や恋愛経験の多さよりも、「良いパートナーになれるかどうか」 を重視する。
たとえ恋愛経験が少なくても、結婚生活に必要な関係継続力やパートナーシップの構築力があれば、充分に幸せな結婚は可能なのだ。
その結果、恋愛競争に巻き込まれずに結婚の選択肢を広げることができ、自分に合った相手と落ち着いて関係を築くことができるはずだ。
ロマンティックラブ vs. ロジカルラブ
恋愛結婚が主流になった現代では、「恋に落ちて、その延長線上で結婚する」という流れが一般的だ。
しかし、結婚とは何十年と続くもの。
果たして、恋愛感情を優先するロマンティックラブと、結婚生活を軸に考えるロジカルラブ、どちらが本当に幸せな結婚につながるのだろうか?
それを比較するために、それぞれの特徴を表にまとめてみた。

一見、ロマンティックラブのほうが「理想的な結婚」に思えるかもしれない。
しかし、ロマンティックラブの前提は、「恋愛感情がずっと続くこと」。実際には、恋のドキドキは時間とともに落ち着き、結婚生活は日常の積み重ねになっていく。
そのとき、「好き」という感情だけで結婚を続けるのは難しくなる。
一方、ロジカルラブでは、「長く一緒にいることができる相手か?」 という視点からパートナーを選ぶ。
恋愛感情に左右されるのではなく、生活の相性や関係継続力を重視するため、結婚後のギャップが少なく、安定した関係を築きやすい。
恋愛をするならロマンティックラブでもいい。
しかし、結婚相手を選ぶなら、ロジカルラブの視点を持つほうが、結果的に幸せな結婚につながるのではないだろうか?
まとめ
ロマンティックラブが「当たり前の価値観」として浸透しているのは、実はここ数十年の話にすぎない。
恋愛と結婚を結びつけるこの考え方が本当に正しいのか、それはまだ検証されている最中だ。
ロジカルラブは「合理的な結婚相手の選び方」 と聞くと、打算的で冷たい印象を持つかもしれない。
しかし、実際にはその逆で、むしろ愛情を長続きさせるための方法論でもある。
恋愛感情だけを頼りに結婚すると、関係が冷めたときに維持する理由を見失いがちだ。
だが、相性や価値観、生活の安定といった持続可能な要素をベースにした関係なら、一時の感情に左右されることなく、長く穏やかな愛情を育てていける。
「好きだから結婚する」のではなく、「結婚するからこそ、長く好きでいられる関係を築く」。
それが、これからの時代に必要な結婚の形なのかもしれない。
ナレソメノート編集部
参考文献:『恋愛結婚の終焉』(牛窪 恵 著/光文社 刊)