【ポメの育休日記 vol.4】赤ちゃんの頭の形、治すべき? ヘルメット治療の必要性や費用を経験者が語る

『ハイスペ夫が、専業主夫になってから』を追うというこちらの連載。
塾長モテコンサル勝倉の夫であるポメさんが、初めての育児に向き合いながら成長していく様をつづる。


連載第1回第2回第3回


「親のエゴ」と「子どものため」の境界線

息子が生まれてから、早数か月。

頭が……微妙に平行四辺形になった。

息子の丸かった頭がゆがみ、少し右に突出した平行四辺形ぎみになってしまったのだ。
確かに生まれたときから向き癖があり、右を下にして寝ることが多かったのは気づいてはいた。
とはいえ、病院でも何も言われなかったのでほっといていたのだが……日に日に、どんどん頭が平行四辺形ぽくなっていく。

新生児の頭はこうも柔らかいのか、と驚きつつ、さすがになにか対策をしてあげねばと思うようになった。
3か月検診で「頭が若干平行四辺形なんですけど……」と、相談したところ、いわゆる「頭の形外来」なるもののチラシを受け取った。

調べてみると、最近、0歳児の頭の形を矯正するヘルメットがはやっているらしい。
値段は……なんと60万円。
体験談では「頭がきれいになりました!」というママパパの喜びの声がたくさんあるが、「とはいえ、頭部が平行四辺形な大人っていないし、普通はかってに治るのでは……?」と大いに疑いの目で見てしまう。

勘ぐりながらウェブサイトを見てみると無料診断があった。
考えているだけよりは……と、悩んだ末に試してみることにした。

病院の特殊なカメラで頭の形を撮って分析してもらう。
すると「ヘルメット治療を強く推奨」との医師の見解が出た。

ここまで来てそう言われると、「いや、いいです」という勇気は、僕にはなかった。

初めてその小さな頭にヘルメットをかぶせたとき、彼は「なにしてるの?」と言いたげな、きょとんとした目で僕を見上げた。
その仕草があまりにも無垢で、思わず胸がぎゅっと締めつけられた。

「こんなに小さなうちから、なにかを矯正する必要があるのか?」
そんな言葉が、ごうごうと耳鳴りのように響く。

どこまでが親のエゴで、どこからが本当に子どものためなのか。
そんな問いに、誰が答えられるというのだろう。
ヘルメットに覆われたかわいい息子の頭をなでながら、内心は問いかけが止まなかった。

育児は答えのない選択の連続

息子が生まれてからのこの数か月で、そんな「答えのない選択」が無限に押し寄せてくることを思い知った。

・母乳かミルクか? 
・おもちゃはどれがいいのか?
・習い事は何をさせるべきか? いつから始めるのがいいか?
・保育園か幼稚園か? 
・受験するか、公立でのびのび育てるか?

例えば、教育1つ取ってもそう。

0歳児向けの英語教育、赤ちゃん用プログラミング教材、IQを伸ばすと言われる知育玩具。
少し調べると、「今やるのが最適!」という言葉があふれかえっている。
さも息子の人生を左右するかのような、重要そうに見えるうたい文句を浴び続けていると、判断基準がだんだん分からなくなってくる。

自分のことであれば簡単なのだ。
判断の責任を自身で負えるし、自身が思う最善・最適を見つけることにさほど苦労はない。
しかし子どものこととなると、本人の意思がまだ分からない中で、「最適」を選択しなければいけない。
子どもの人生に関わる(ように見える)意思決定を、子どもの代わりにし続けるのは、それなりにストレスがかかる。
目隠しをして箱の中の「当たり」を引こうとするかのような感覚。これが子育ての難しさなのだなと、改めて思う。

僕自身はというと、幼少期に習い事を大量に詰め込まれたわけではない。
むしろ、外で泥だらけになりながら遊んでいた記憶のほうが鮮明だ。
それでも、なんとか社会人になり、家庭を持ち、今こうして生きている。

だから、自分の体感的には「それなり」でいいのだろうなとは思う。

しかし、時代が変わったのも事実だろう。グローバル化・情報化――僕が子どもだった頃とは違う世界を、この子は生きていく。
「昔こうだったから」では通用しないことも多々あるんだろう。

選択肢が増えた分、親の価値観がより強く子どもに影響を与える時代になった。
何を学ばせるか、どんな経験をさせるか、どんな価値観を伝えるかによって、多少なりとも子どもの人生は変わる。

彼にとっての最適や「当たり」がなにかなんて、分かるはずもない。

でもだからこそ、僕は自分自身に対して、健全な猜疑心を持って問い続けたい。

・親の不安を埋めるための選択ではないか?
・周りに流されて無意味な選択をしていないか? 
・息子の興味や適性をちゃんと見ているか?

とりあえずは、この辺りを忘れずにいたいと思っている。

ヘルメットをかぶった息子は、無邪気に僕の指を握りしめる。

僕にできるのは、日々息子を想い選択をした積み重ねを、いつか自分の意思を持って選べるようになった彼に、そっと手渡すことだけだ。

「この選択は、彼の未来にとって良いものなのか?」

何度も自分に問いかけながら、そこの小さな手が大きくなるのを待ちたいと思う。

執筆:ポメ
妻:モテコンサル勝倉