【チュートリアル福田】子育てを通して得たこと。不自由を自然に受け入れられた。vol.3
芸歴26年目のコンビ、チュートリアルでツッコミ担当を務めるお笑い芸人、福田充徳さん。M-1グランプリ2006での優勝を機に、お笑い界で確固たる地位を築いた。バラエティ番組の出演をはじめ、多方面で活躍し、その冷静なツッコミと多才な一面が幅広く評価されている。今回はそんな福田さんの、「結婚の哲学」を紐解いた。
自由は、別に無くてもいい。子育てを通して感じたこと。
yuzuka:お子さんが生まれてから、福田さん自身のライフスタイルにも変化はありましたか?
福田さん:ガラッと変わりましたね。結婚だけやととくに変化はなかったんですけど、子どもが生まれると起きる時間から寝る時間まで、全てを子どもに合わせることになるので。
あとは独身の時は僕、ふらっと1人でバイクに乗ってサーキットを走りに行くとかもしてたんですけど、奥さんが妊娠したぐらいからかな?そこからは一切行ってないんですね。悪阻が酷いとか、夜泣き対応で寝不足とか、そんな時に「ちょっとバイクで走ってくるわ」はさすがにあかんよな、と(笑)それで揉めるんやったら、もうバイク我慢しよって自然に思えるというか。そういう部分は、すごく変わりましたね。
yuzuka:結婚する前に福田さんが恐れていた「自由がなくなる」といった感覚に近い気がするのですが、実際にはどう感じましたか?
福田さん:ぶっちゃけ、「無ければ無いで別にええか」って感じです。もっと年行って、子供がもうちょっと大きくなったら、別にやりたいこともう1回やったらええし、どうしても今無理してやりたいことなんか、無いよなって思うようになって。昔ほど「1人でやりたいこと」に執着が無くなってきたのもあるかもしれないです。それ以上に、子どもとの時間が貴重というか。
yuzuka:なるほど。というのも実は当時福田さんが恐れていた、「子どもがいるとやりたいことができなくなる」みたいな感覚こそ、今の若者が恐れているものなのかなって思うんです。
福田さん:たしかにね。今はその、「やりたいこと」とか「やれること」が増えちゃってるしね。1人で遊ぶのって、ほんまに楽しいですからね。子どもができると行く店も場所も限られてくるし、子ども中心になりますから。例えば漫画ひとつとっても、子どもを放ったらかして横で読めるか?っていうと厳しくて、「じゃあ、寝かしつけてからかな」とか、そこも子どもの時間に合わせることになるしね。
子どもが生まれてみて。「もう、いないのが考えられへん」
yuzuka:そんな中で、「だけど子どもがいて良かったな」と思う瞬間はありますか?
福田さん:っていうかもう逆に、いないことが考えられないんですよ。「いてくれてほんまにありがとう」って気持ちしかない。
yuzuka:感謝。
福田さん:そうですね。経験もそうですけど、自分が今まで感じたことのないような感情をくれるから。子どもに関しては、「いてよかったな」という要素しかないかも。
yuzuka:福田さんは芸人さんとしても一線で活躍されていますから、経験という面では他の方よりも豊富な気がするのですが、それでも「今までに感じたことのない感情」ってありましたか?
福田さん:ありました。なんというか、「知らなかった感情」ですよね。例えば保育園のちっちゃい運動会。自分の子どもがリレーで、他の子を抜いた時とか。「え、これってこんなに嬉しいんや」って。僕自身が自分でリレーをしてめちゃくちゃ嬉しかったことなんて無いけれど、自分の子どもとなると、それがこんなにも嬉しい。
逆に、運動教室とかでね。うちの息子だけ何かができなかった、とか、そんな時には「うわあ、どうしよう。できひんかった。お先真っ暗や…」ってへこんだり(笑)別に側から見たら、「そんなもんそのうちできるやろ」ってことでも、「どうしよかな、まじで」って。自分のこと以上に感情が動くというか。
yuzuka: 子どもに対する感情の振れ幅が大きいのは、とても共感します。
福田さん:自分でも知らなかった感情をくれるのは、やっぱり子どもだけやなって思います。それに比べたら、別に1人の時間なんて無くてもいいかって。まあ、その感覚が実際に子どもができるまで想像できひん気持ちは、めっちゃ分かるけどな……。
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ナレソメ予備校の学年主任で、ナレソメノート編集長。元精神科の看護師で夜職の経験もあり。普段はエッセイストや脚本家として活動している。著書「埋まらないよ、そんな男じゃ。」(逆旅出版)他3冊。「愛の炎罪」..etc脚本。日刊spa!でも取材記事を不定期連載中。